「アサド大統領を大統領の座から引きずりおろすこと」は、アメリカ政府の長年の目標であった。大統領や国務長官レベルの発言で確認することができる。アサド大統領は、軍事的な不利を把握し、「アメリカの夢」を叶えるかわりに、流血沙汰を避ける方法を選ばれたのだろうと私は考えている。
私は、『X』に流れているアラビア世界のニュースを見て、アラビア世界は、私が考えているよりもずっと複雑であり、「団結」するような「宗教的な絆」はなかったのかもしれないと思うようになった。ガザの件で薄々気づいていたが、私の考えている「アラビア世界」というものは、おそらく存在しないのだ。
地図上の中東に位置する国々は、石油や天然ガスを産出する国々である。私のような日本人には想像もつかないような「リッチな場所」なので、アラビア世界の人々は、とても慎重なのかもしれないと思う。それはSNSや旅行や「長期滞在」などではうかがい知ることのできない「アラビアの本当の顔のひとつ」であろう。
アサド大統領は苦境でも品位を保ち、西側と裏取引をすることがなかった。超大国アメリカや、ご自身が青春を過ごされたイギリスの、その政府のことも、容赦なく批判した。自身の置かれている状況を語る言葉には、知性が溢れていた。
私が『X』で見た限りでは、アサド氏は、「アラビア世界の代表者のひとり」というより、世界中にいる「不屈の精神を愛する人々の代表者」になっていたようだ。アサド氏の「ファン」は、「世界各国にいる」という状況である。「アメリカに屈しない」というアサド氏個人の資質(人格)が、世界中の人々に愛されていたようだ。
ロシア政府は自分たちがどのようにシリアと関与していくのか、具体的なことは何も言っていない。だから、私は、アサド軍とロシア軍がダマスカスを奪還することをつい期待してしまう。シリアには、いままでのような「多宗教国家」として存続してもらいたいと思う。シリアが「イスラム原理主義」に染まるとは、想像もしていなかった。永遠にアサド氏が守り抜くような気がしていた。
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Dec 9, 2024 20:15(JST) 誤字訂正 算出する → 産出する