「紀州のドンファンの妻の無罪判決について意見を聞かせろ」という通知がきていた。
私は安倍氏のお声がかかりで最高裁判事になった元東大教授のゼミ生なので、無罪判決は「想定内」である。よって、「法律論としては理解できる」とは言えるが、「社会問題の解決」という立場で見ると(←私は元出版社起業希望者である)、「不当判決」だと思う。なぜなら、「覚醒剤を入手した人物」と密室でふたりきりでいた人物が「覚醒剤」の中毒で死んだという事件において、「覚醒剤を入手した人物」が無罪になるというのは、「財力による法の不平等」を肯定することにしかならないと思うからである。「覚醒剤を使った殺人」「権力者が法律やルールを恣意的に運用して部下を自殺に追い込むこと」は無罪になり、「自分を虐待した近しい大人を果物ナイフで刺し殺した子供」や「自分と同じように不幸な過去を持つ他人を死に追いやったことがわかっている権力者を木刀で殴って殺した反政府活動家」が確実に有罪になるという事態は、私には「不当」に見える。
よく考えてほしい。そもそも、「覚醒剤の売人と接触する」ということは、「異常」である。
報道によると、警察は「妻氏が覚醒剤の売人と接触していた」ことを突き止めている。売人も特定されて証言者として出廷し、妻氏も購入の事実を認めているとのこと。
「覚醒剤の売人と自分から接触する」などということは、一般人(特に若い女性)にはできないことである。「接触方法を調べる」のと「実際に接触する」のとは「別の話」である。実際に売人に接触を試みるなどということは、その人物が「潜入ルポで一発当ててやろうと考えた」というのでもない限り、まずしない。
特に、妻氏は野崎氏という日本中に知られた資産家の妻であることから、「ありえない話」である。
野崎氏が有名資産家であるというだけでなく、妻氏が野崎氏から「月100万の小遣い」をいただいているということまで報道されていたのだから、妻氏がヤクの売人に接触したら、以後売人に違法行為を「弱み」として握られ「金づる」にされてしまう可能性が高く、あまりにもリスキーである。売人は、妻氏に「夫にバラすぞ」と言うこともできるし、妻氏に「いいよ、ばらしなよ。私は夫の頼みで買ってるんだよ」と言われたら、「野崎氏がヤク中だとマスコミにバラす」と言い、法外な料金をふっかけることができる。芸能人のヤク関連の記事を読んだとき、私は、芸能人が売人のターゲットにされやすい理由というのが「脅してふっかけられるから」ということを知った。私は、芸能人は政治家と近く、「免罪してもらいやすいから」ではないかと思っていたので、その理由にはちょっとがっかりした。私は芸能人と売人が政治家をあてにして「win-winの関係」を結んでいると推理していたのである(つまり、政治家は売人と芸能人と「グル」または「ヤク仲間」または「ヤクマーケットで利益を得ているステークホルダー」であると私は考えていた。そうでなければ、売人グループがもっと摘発されているはずではないか? そもそも岸信介という大物政治家が国家事業としてのヤク製造販売の総元締だったのであるからして)。
妻氏は、金のために野崎氏と結婚したそうだから、金を大切にしていると考えられる。妻氏が「月100万円のお小遣いのすべてを売人に脅し取られる状態になるリスク」をとることは絶対にないと私は思う。特に、金のために結婚した愛してもいない夫の「希望を満たすため」に金を失うリスクは絶対にとらないと思う。妻氏によると、「ヤクをやりたい」というのは野崎氏の「希望」だったそうだ。金のために結婚した夫に「ヤクをやりたい。購入してほしい」と言われたら、「あんたのために違法行為はしないよ」とけんもほろろに断るか、「キメセクを迫ってくる気だな? 」と考えて断固拒否するか、購入に夫の部下を使うことを考えるだろう(つまり、自分の手は汚さない+「入手できなかった」ということにして諦めさせる方向に持っていく)。
なぜ妻氏はヤクの売人と接触したのだろうか。「夫の希望を満たしてやりたい」という「愛」やら「芸能人みたいなセックス」やらではない、「どうしても入手したい強い動機が、本人にあった」と考えるのが妥当である。
野崎氏が覚醒剤の常用者でないことも分かっている(野崎氏が常用者であればそもそも妻に購入を頼まないだろう)。
和歌山カレー事件では、凶器が砒素であったので、私は、検察は、「この砒素で殺した」と言う必要があったと思う(被告の自宅にあった「この砒素で殺した」と言えないことが判明したのであれば、無罪にすべきであったと思う)が、覚醒剤は「砒素」のような性質を持たないようだ。砒素と覚醒剤とは同一性の程度において比較することのできない凶器なのだから、本件と和歌山カレー事件を比較するのはナンセンスである。
今後、日本では、推理作家は全員凶器に覚醒剤を使うであろう。